| 『鬼のいる庭』詩・岡田哲也/画・小林重予
●2009年3月4日付「北海道新聞」夕刊
「往来葉書」で心の交換 札幌の造形作家・小林さん鹿児島の詩人と作品集出版
「往来葉書」と名付けたユニークな絵はがき作品の制作に取り組んでいる札幌市の造形作家小林重予さん(51)が、鹿児島県出水市の詩人岡田哲也さん(61)と交換した絵と詩の作品をまとめ、詩画集「鬼のいる庭」を共著で出版した。
小林さんは大学で金属工芸を学び、インドネシアで木彫りを習得。多彩な素材を組み合わせた造形作品を発表している。岡田さんは大学中退後、故郷の出水市を拠点に詩やエッセーなどを発表。「岡田哲也詩集」(現代詩人文庫)などの著書がある。
「往来葉書」は80円分の切手で送れる大きさのはがきを使い、日常感じことを絵などで表現して投函。受け取った人がそれに文章などを付け、送り返す方式。(略)
かつて鹿児島県に半年間滞在した時に知り合った岡田さんの協力で、2007年2月から1年間、小林さんが絵を送り、岡田さんが詩を付けて返す往来葉書を続けた。小林さんが使用済みのティーバッグを使って貼り絵状に仕上げたはがきを送ると、岡田さんは「ティーバッグに/お湯を注いだら/青空が沁みでてきました/(以下略)」と書き込むと言った具合だ。
詩画集には北海道と九州の間でできた作品55点を収めた。「絵に対する想像が広がって思わぬ詩が返ってくる。その“ずれ”が魅力」と小林さん。「(略)新しいコミュニケーションとして提案したい」と話す。岡田さんは「受け取るたびにその時その時の言葉でつづった当意即妙の詩ばかり。どんな風に読まれるか楽しみ」と振り返る。
●2009年3月24日「あさひかわ新聞」
小林重予の旅するアート10 往来葉書
札幌在住の造形作家小林重予さんのアイデアで始まった「往来葉書」。二人の間で1枚の葉書が行き交い共同作業を楽しむ郵便アートです。(略)
「わたし/ふかく感じることはできても/わたし/ふかく考えることはできない
しかも/ふかく傷つけることはできても/わたし/ふかく慰めることはできない
ふれあったところから/かがやいてゆくか/くさってゆくか
くだものはくだもの/けだものはけだもの
わたし/ふかく生きることはできても/わたし/ふかく死ぬことはできない」
詩人と造形作家がかわした49番目の往来葉書です。小林は、丸いチーズのパッケージを貼り付け、その隙間に鳥が飛ぶ山と波間に浮かぶ女性を描いています。
対する岡田の詩。「感じる」ことはできても「考える」ことができず、「傷つける」ことはできるが「慰めることができないとあります。困ったことですが、このフレーズにハッとしました。これは私のことだわ…と。
詩を見た小林は、このチーズになぜこの詩なのだろうと首を傾げたと言います。しかし、私には詩がポップな絵柄に自在に感応し、時代の「気分」を的確にとらえ、絵と溶け合って見えるのです。
北と南。異なる場所と時間を生きる両者が重ねた葉書の数々は、時に心地よいハーモニーを奏で、時に屹立しながらも、美しく哀しい生の光と影を照射し、未だ見ぬ豊潤な世界へと私たちを誘うのです。(斉藤知子・学芸員)
●2009年3月22日「南日本新聞」読書欄(記事略)
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