時空を翔る言葉の親和力をさらに鮮明にした 柳生じゅん子第六詩集
ひそかに
今から生まれてくる者たちが
目をさましている
少し前に逝った者たちは
振り返っている
蚕が吐く糸のこそばゆさで
内耳をくすぐる
すこやかな螺旋をすべる
わたしの骨を鳴らしにくる
---「水琴窟の記憶」より抜粋
「自分の机が欲しかった。読みたい本を積み重ねて置く、ファイルをきちんと並べ、ノートをすぐに広げられる机。/長い間、風呂敷に幾冊ものノートと手紙類、もうひとつには、本を重たいほど入れて、食卓へと通っていた。来客や用事、食事の前には、急いで掻き寄せて、部屋の隅に重ねる日々であった。(略)/あの頃、食卓までの二メートルほどの間には、山道があり、石の河原、時には草薮があった気がする。だから風呂敷に包まれていた特別な世界、切羽詰って結び目を解く時には、あんなにわくわくしたのであろう。」(「あとがき」より)